着床前全染色体診断(CCS)プログラム

着床前全染色体診断(CCS)プログラムとは

着床前全染色体診断(CCS)プログラム

着床前全染色体診断(CCS=Comprehensive Chromosome Screening)(以下「着床前診断(CCS)」と表記)とは 、体外受精プロセスにおいて受精卵が得られた後、各々の受精卵(胚盤胞)に着床前診断を実施し、染色体異数性(染色体異常)が「無い」と診断された受精卵のみを選別して胚移植を行なうもので、『健康な赤ちゃんを授かる』という目的をもって開発された画期的な最先端技術です。

2014年以降に弊社IFCプログラムに進んだ日本人患者様の100%が、治療プログラムの種類に関わらず、着床前診断(CCS)実施を選択されておられます。(着床前診断:CCSは、今や米国ではすでに標準選択肢となりつつあります。)

着床前診断(CCS)を実施すると、各々の受精卵に対して、染色体全種類(性染色体を含む23対すべて)について染色体異数性(染色体異常)を調べることができます。弊社IFCプログラムでは、夫婦間体外受精の他、卵子提供プログラムや代理出産プログラムも含め、体外受精を行なう全てのプログラムにおいて着床前診断(CCS)の同時実施が可能です。

卵子提供プログラムとの同時実施についてはこちらから

夫婦間体外受精における治療の内容

着床前診断(CCS)を実施しても、患者様ご自身が直接関与する部分は一般の体外受精治療/凍結胚移植と全く同じで、追加のお身体への負担は一切ありません。

通常の体外受精と同様に、奥様の排卵誘発を行い卵子を採取し、ご主人の精子と体外受精(あるいは顕微授精)を行います。受精卵を胚盤胞の段階まで培養し、発達状態の良い胚盤胞それぞれの栄養外胚葉(外側に位置する部分)から5-6個の細胞を採取した後、受精卵はパシフィック生殖医療センターにて凍結保存されます。採取された細胞は、着床前診断(CCS)ラボラトリーへ送られ、各々の受精卵ごとに、全種類の染色体に異数性(染色体異常)がないかどうか診断が行なわれます。

胚盤胞の内塊部(後に胎児となる部分)からは一切細胞を採取しないので安心です。

診断結果が出た後、奥様の都合の良い日程に合わせ、『染色体正常』と診断された受精卵のみを選び、胚移植を行ないます。

胚移植の際、染色体正常と診断された受精卵の中から、希望の性別の受精卵を選んで移植することもできます。

着床前診断(CCS)対象患者様

体外受精治療が適応となる患者様全員。

着床前診断(CCS)が特に有意義なケース

  • 習慣性流産(反復流産)
  • PCOS (多嚢胞性卵巣症候群)
  • 加齢などにより、過去の体外受精で良い結果が出ていない場合
  • 伴性劣性遺伝(X染色体連鎖劣性遺伝)疾患が家系にあり、PGDを実施せず性別の判定を希望する場合

男女産み分け対象患者様

着床前診断(CCS)実施時に男女産み分けを希望する患者様全員。

ファミリーバランシング

(どちらか一方の性別のお子様が続き、次のお子様は別の性別をと希望される場合)を希望する患者様も対象となります。

着床前診断(CCS)のメリット

  1. 高い妊娠率
  2. 流産回避
  3. 染色体異常胎児妊娠の回避
  4. 男女産み分け可
  5. 心身の負担と余分な治療費発生の回避

高い妊娠率

1個の染色体正常胚盤胞移植で1回につき70-75%の妊娠率

着床前診断(CCS)実施により、妊娠の可能性があると診断された受精卵のみを移植するわけですから、一回の胚移植ごとに高い妊娠成功率が現実のものとなります。

2014-2015年度のパシフィック生殖医療センターの統計によると、着床前診断(CCS)実施後、染色体正常な受精卵が得られさえすれば、年齢層により若干の違いはあるものの、全年齢層で、一回の胚移植につきおよそ67-75%という驚異的に高い成功率が挙げられています。

多胎妊娠のリスクの回避:

たった1個の移植でこれだけ高い妊娠成功率が期待できるので、従来のように、高い成功率を希望するあまり、やみくもに多くの受精卵を移植する必要もなくなります。これは、複数の受精卵を同時に移植した結果多胎妊娠となってしまい、早産・未熟児出産で引き起こされる出生児への身体的リスクを回避できることも意味しています。

女性の年齢との関係:

高齢妊娠を試みる場合、得られた受精卵のうち、染色体異常があるものの比率が加齢と共に高くなっていきますから、着床前診断(CCS)実施により、染色体正常な受精卵を選んでから胚移植することが益々重要な役割を果たします。

流産回避

流産の主な原因は、受精卵の染色体異常であるとされているため、良い結果をもたらさないことがわかっている受精卵を移植しないことそのものが、流産を最大限回避することにつながります。

流産を繰り返した場合、精神的な辛さの他、流産処置により子宮内膜に何らかの変化を来たし、その後の妊娠に向けて悪影響が出るリスクがありますが、着床前診断(CCS)実施によりそのようなリスクを回避します。

従って、着床前診断(CCS)は、治療を受ける女性の心身の負担を軽減し、「本当に赤ちゃんを授かる」までの道のりを短くする試みのための重要な手段となっています。

染色体異常胎児妊娠の回避

着床前診断(CCS)は、ダウン症などに代表される染色体異常のある胎児の妊娠を避け、健康な赤ちゃんを授かるための重要な役割を果たします。実際に赤ちゃんの命を宿してから、羊水検査などの出生前診断の結果、妊娠継続するか否かの決断と直面するのは、人間として想像を絶する苦しみとなります。着床前診断(CCS)を実施することで、そのような苦悩を回避します。

ダウン症などに代表される染色体異常は、加齢と共に発生率が高くなっていきます。そのため、高齢妊娠を試みる際には、着床前診断(CCS)実施が、その後の治療方針を示唆するような益々有意義な情報をもたらします。

男女産み分け可

受精卵の性染色体を含むすべての染色体について異常を調べるため、同時に個々の受精卵の性別も報告されてきます。従って、染色体正常の結果が出た受精卵の中で、希望する性別の受精卵を選んで移植することが可能です。特に高齢出産のケースなどにおいて、ファミリーバランシングの考慮をするときなどに有効な情報となります。

*逆に、赤ちゃんの性別は、お誕生までのお楽しみにとっておかれたい患者様は、着床前診断(CCS)ラボラトリーに予め、性別開示はせず、単に性染色体が正常かどうかだけの情報開示をするように依頼しておくことができますのでご安心ください。

心身の負担と余分な治療費発生の回避

最初から着床しない、あるいは流産の主な原因となることがわかっている染色体異常のある受精卵を移植しないことで、実際に赤ちゃんが授かるまでの胚移植回数を減らすことにつながります。

確かに、着床前診断(CCS)では、受精卵診断の費用が発生します。しかし、その費用を上回るメリットがあると、現在着床前診断(CCS)を選択している日本人患者様は考えています。治療を何度も繰り返すのは、精神的にも肉体的にも大変に辛い上、毎回の治療費や渡航費もかさんでしまいます。最初から良い結果にならないとわかっている受精卵を着床前診断(CCS)によって選別してしまい、そのような受精卵を移植しないことで、辛くて無駄な治療を受ける必要がなくなります。

女性の年齢との関係:

不妊治療は時間との戦い、と言われる中、高齢になってから治療を始める女性が多いのも事実です。高齢妊娠を試みる場合、得られた受精卵のうち、染色体異常があるものの比率が加齢と共に高くなっていきますから、着床前診断(CCS)実施により、染色体正常な受精卵を選んでから胚移植することが益々重要な役割を果たします。

年齢別の統計によると、32歳未満の女性の卵子による受精卵は、一回の採卵サイクルで得られた受精卵総数のうち、およそ67%が染色体正常(20代の卵子ドナーの卵子の場合はおよそ75%が正常)であり、35歳を越える頃にはそれが50%となり、40歳頃には33%、そして45歳頃には、受精卵が得られてもほぼ全部に染色体異常が見られるという結果が報告されています。

従って、染色体異常の無い受精卵が得られさえすれば極めて高い妊娠成功率が期待できる半面、加齢と共に、そもそも染色体異常の無い受精卵が得られる確率が低くなってしまう、という事実と直面することになります。

つまり、着床前診断(CCS)を実施する場合も、少しでも年齢(卵巣年齢)が若いうちに実施できれば、更に妊娠への可能性が高まる要因となります。

着床前診断プログラムにおける採卵時の年齢制限:

採卵する女性が満45歳の誕生日を迎える頃には、卵子が採取できても、受精卵が得られても、卵子の老化が原因で染色体異常のある受精卵しか得られないという結果がほとんどとなってしまいます。また、一般的に40歳を越えると採取できる卵子の数が少なくなることもあり、着床前診断の適応となり得るほど卵子の数が得られないことが多くなっていきます。

そのため、自己卵子による着床前全染色体診断プログラムでは、採卵する女性の満42歳のお誕生日までにプログラムへのお申込をお願いしております。これは、その後治療と向き合う充分な時間を確保するためです。初回検診の際に、担当医の診断により、個々の可能性について所見を受けていただきます。どうぞ諦めずに、健康な赤ちゃんを授かるため、この現実的な可能性に挑戦されてみてください。

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の場合:

PCOSの場合、一回の排卵誘発で多数の卵子が得られるのに、その多くが未成熟卵だったり、得られた受精卵のうち染色体異常の比率が高くなりがちなことがわかっています。つまり、PCOSの場合、受精卵が染色体正常であることを先に見極めてから移植することが、特に重要となり、時間との戦いの中で、心身への負担の回避にもつながります。

【※成功率についてのご注意】

弊社サイトで発表している成功率は、すべてASRM(米国生殖医療学会)の指針に基づいた、正式な算出方法・母集団の取り方(グループの定義と指定の期間等)によるものです。指針に基づかない算出方法での成功率をウェブ上で発表している団体もあり、また、成功率を高く見せるために複数個の受精卵を同時に移植しての数値が表示されていることもありますので、成功率を比較する時は、どうぞご注意ください。

更に、成功率90%という数値を掲げているところもあるようですが、学会公認算出法により公式発表されている全米各施設の成功率の中で、「一回の胚移植に付き1個移植した場合の成功率」が90%という数値は存在しませんので、併せてご注意ください。