最新情報2001.12IFCニュース

雅子様ご出産のニュースを得て

皇太子殿下ご夫妻に内親王様ご誕生のニュースは、何かと事件が多かったこの秋に、一点の明るいニュースとして取り上げられています。無事にご出産され、母子ともにお健やか、ということで本当におめでたいことです。ただ、ご夫妻、特に雅子様の今までのご苦労、そしてこれからも男子ご出産のプレッシャーの可能性があるかもしれないことを考えますと、複雑な気持ちが残ってしまいます。

公的なお立場にいらっしゃる雅子様が、どれだけのプレッシャーを受けながら今回のご出産に至られたかと思うと、「おめでとうございます」よりも「ご苦労様でございました」という言葉が先に出てしまいます。雅子様ご自身が何らかの治療を受けられていたのかどうかはわかりませんが、ご成婚から8年という雅子様ご出産までの道のりの中で、お子さんを望んでいるのになかなか授からないという痛みがある、ということを知った人が増えたのではないでしょうか。同時に、日本全体で「不妊」あるいは「不妊治療」ということに対しての意識が高まり、そしてその「不妊」という状況が心身ともにどれだけの負担をもらすものなのかということについての社会的認識も随分高まったような気がします。

私共では、サンフランシスコ生殖医療センターにおいて、日本からおいでになる多くのご夫婦の生殖医療におけるお手伝いをしておりますが、どのご夫婦も、お子さんを授かるため、それぞれ言葉では言い尽くせないようなご苦労をされていらした方々ばかりです。周囲の人々から「子供はまだなの?」という挨拶代わりのような言葉をかけられるたび、あるいは毎年誰かから送られてくる「家族が増えました」という写真付きの年賀状を見るたびにどんなに傷つき辛かったか、といった経験は想像以上に多くのご夫婦が経験していることなのです。不妊治療そのものについても、身体的、精神的、金銭的、時間的、とあらゆる面での負担を乗り越えなくてはならないということは申すまでもありません。

皇太子殿下がお生まれになった年である1960年の日本の平均初婚年齢は24.4歳であったのが、1998年には27歳に上昇しているとのことです。その同じ1998年は、日本国内で体外受精で生まれた子供の数が1万人を越えた年でもあります。そして、1999年の統計によると、30歳代の初産が30%近くという数値が出ています。女性の生殖力が一番高いのは、つまり卵子の生殖力が高いと言えるのは、32歳程度までで、その後はどんどん妊娠率が低下していくことがアメリカの統計で分かっています。身体的な生殖力のピーク時と、自分なりに選択した「子供を持つ準備ができる」人生のタイミングにずれが出来ている、というのはよく言われることです。
しかし、不妊の原因は単にそれだけではありません。それはあまりメディアで取り上げられることがない、「病気としての不妊」です。卵巣機能障害、子宮の障害、内分泌系の障害…などなど、その例については枚挙にいとまがありません。女性の社会進出とか、結婚年齢の遅れとか、それらに関連して最も生殖力が高い時に妊娠の試みがされていないための不妊、というのはもちろん多く存在します。しかし、人口のある一定数に起こっている数々の障害、過去にはわからなかったいろいろな「病気」や「体質」が不妊の原因として挙げられ、現在では治療が可能になっています。

私共では、「不妊治療は、頑張って頑張って『不妊治療の優等生』になっても、卒業証書がなかなか出ないことがある…」ということを身をもって知っております。その卒業証書の内容は、それぞれのご夫婦にとって全く違うものになることでしょう。しかし、ご夫婦がご夫婦なりの卒業証書を得るためには、目の前にある選択肢を把握し、ご自分達に最適な道を選ぶことが大切です。最高水準の医療技術、生殖医療に対する社会的理解と法的環境等のなかで今現在可能である新しい生殖医療の選択肢を選べるサンフランシスコという環境の中でこれからも全力を挙げていきたいと考えております。

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